大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和33年(オ)599号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人小笠原六郎の上告理由について。

商事契約の解除による現状回復(本件では特定物の返還義務)は商事債務であり、その履行不能による損害賠償義務も同様商事債務と解すべきである。そして右損害賠償義務は本来の債務の物体が変更したに止まり、その債務の同一性に変りはないのであるから、商事取引関係の迅速な解決のため短期消滅時効を定めた立法の趣旨からみて、右債務の消滅時効は本来の債務の履行を請求し得る時から進行を始めるものと解すべきである。従つて、右と同趣旨の原審の判断は正当であり、原判決には所論の違法はないので論旨は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔 裁判官 石坂修一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例